アート - 自然の中のアートを、いくつ見つけましたか?

私たちの目を楽しませてくれるのは樹木や草花だけではありません。風雨にさらされながらも風景の一部として、多くのアートが、訪れる人の記憶に焼き付けられています。〔カナール〕の噴水の中央に立つ四人の若人の像、手に手に十数羽の鳩を掲げて大空を仰いでいます。足下からは幾筋もの噴水が舞い、カナールに注がれます。残念ながら作品や作者を示すプレートが見つからず、気になっていました。先日(2008)、クリスマスのイルミネーションを見に出かけた折、立川口の係の人に尋ねてみました。事務所の中で熱心に書類を調べて下さったのですが、多くの方が次々に入園される時間なので、「後日」ということで遠慮しました。冬の春めいた平日、体調もよく、本年の初散歩を終えて、汗ばみながら西立川口を出て、思いついて踵を返して職員の方にお訪ねしてみました。その方の記憶の中にあったようです。「明日の空へ、でなかったかしら…」と確かめるように書類をめくってくれました。「峯田義郎作・明日の空へ」という、高さ10Mほどのブロンズ像で、昭和57年に購入されたもののようです。公園内ではもっとも古く、開園当初からあった唯一の作品です。お二人の職員の方のお蔭で、気になっていたことが解決し、ほっとしました。今や〔みんなの原っぱ〕の欅の木と並んで、公園のシンボルとなっています。
実は市制50周年(1990)を記念して、立川市は市民投票を参考に「立川五十景」を選定しています。最も投票の多かったのが「昭和記念公園」で、このブロンズ像とカナールの織りなす風景も選ばれています。「普済寺」や「玉川上水緑道」など、歴史の香りを残す風景と同じように、はやくも市民の心の中に溶け込んできていたのでしょう。
〔カナール〕を抜けて〔であいの広場〕には、座して黙想する人、おそらくその人の想念をあらわしているかのように、頭上には果てしない空を見上げる女性の立像・『彼方に』(西村文男作・黒御影石)があります。 この作品を右に見て〔ふれあい橋〕を渡る。徐々に〔水鳥の池〕が視界いっぱいに広がると、目の前の〔眺めのテラス〕の片隅に『廃墟』(斎藤史門作・銅製)があります。錆びて変色していますが、これも作者の意図かもしれません。思わず振り返ると、裸婦像『ユーウツの為のアダージョ』(渡辺治美作・ブロンズ)が植え込みの中に佇んでいます。
池を左に見て〔さつき橋〕へ進むと、木の間から、ゆったりとした女性の後ろ姿が見えます。『花咲くころ』(鶴田清二作・御影石)です。池畔の開けた一角に立ち、軽く腕を組んで、静かに水面を、さらには対岸の木立や、そのまた向こうの山並みをすら眺めているようです。この作品を背にカメラにおさまる人も少なくありません。
近くの緑陰に囲まれて、『風になって』(樋口恭一作・御影石)が腰をかがめて風を感じているようです。〔さつき橋〕を渡ると、〔みんなの原っぱ〕は目の前に迫っています。広大な原っぱの中にはアートに負けない、四季折々に変化する欅の巨木があります。子供が大人になって、そのまた子供を連れて、そのまた子供が大人となって……、その頃には自然は『欅』をどんな作品に仕立てているでしょうか。
〔さつき橋〕の手前、〔花木園展示館〕を左に 折れると〔ハーブ園〕に向かいます。その途中の 右手、林の中の草地に女性の立像「笈」(遠藤幹彦・ ブロンズ)があります。周囲の緑に映えて、人間の 体の輪郭が緩やかな曲線で際立つ美しい裸像です。 迂闊なことに、今まで私は、この裸像に気付かず に歩いていたのです。覚束ない足どりのせいで、 ポイントで立ち止まる時間が少々長くなったせい か、先日(2009・春)の散歩で、植え込みの花に カメラを向けた直後に、奥まった林の中の裸像が 視界に入ったのです。リアルな、女性の立像でし た。ありのままの美しさが伝わってくる感じがし ました。本当に迂闊でしたが、今回(2009・秋)の 更新で初めて書き加えることが出来た次第です。
〔バーベキューガーデン〕の南端は季節ごとに様々な花で彩られます。そのお花畑に囲まれるように、抽象性の高い二つの作品があります。一つは『記憶』(高岡典男作・御影石)。もう一つは、その名の通り、女神として大地を守るかのような『Rhea』(メリー=クレール・デュ・フィリッピ作・御影石)。ともに多くの若者たちの楽しいひとときを見つめています。
公園内には15の彫刻作品があるようです。くまなく歩いているつもりでも、一つ二つ見落としている作品があるようです。作品名や作家名などを示すプレートがないのでアートとしての判定が私には出来ないこともあります。
愛嬌溢れる動物の像も幾つもあります。その中でも散策中「おや、何だろう?」と思わず草むらの中に足を踏み入れ、近寄って、触って確かめたものがあります。周囲を見渡してみると、この緑の海原に三頭のイルカがいました。玉川上水口近くのイルカは草と戯れながらも、何となく寂しそうでした。林の向こう、〔こどもの森〕の歓声が微かに聞こえる草地なのに、ここまで遊びに来るものが極めて少ないからです。