私の昭和記念公園

橋づくし - どの橋を渡りましょうか?

 公園には北西から東南にむかって、一級河川・残堀川が流れています。西多摩郡瑞穂町箱根ケ崎の狭山ヶ池を発して川はやがて多摩川に合流します。

 私の幼少年期には台風など豪雨の後は、水嵩を増した茶色い濁流が通学路の足下にうかがえて怖かった記憶があります。昭和四十年代の半ば頃から河川改修事業が進められて、最近では川らしい流れを見ることは稀です。公園を訪れる人の中から、橋を渡りながら「水無し川だ」という声が聞こえる時もあります。最近はパークトレインのガイドさんもこのことに触れています。実際に、写真のような川らしい佇まいを見せることは少ないのです。しかし早春の川には菜の花が流れています。
思わず橋の上に立ち止まって見下ろしてしまいます。

 この川は町中や住宅街を経て、公園の中を流れます。園内で一番上流に位置するのは〔玉川上水口〕で、質素な門を出ると、そのまま残堀川の川沿いの道に出ます。〔やまぶき橋〕より遙か北、園内と同様、桜並木の散歩道で、地元の方々の散策路になっています。道端には多摩川合流地点までの距離を示す札が随所に立てられ、歩く距離の目安になっています。途中、沢山の橋を横目に川の上流に向かい、五日市街道を横切り、住宅街を抜けていきます。やがて〔玉川上水路〕と立体交差する地点を右に折れると〔玉川上水散策路〕です。鳥瞰図の「玉川上水散策絵図」(アトリエ77)も参考になります。西武拝島線の「武蔵砂川駅」を左に見て、上水の流れに耳を傾けながら木陰の道をモノレールの駅まで歩いても、無理のない散策コースです。園内の散策で飽き足らない方には、お薦めです。 橋が多いのは、町中はもちろんのこと、園内でも例外ではありません。橋を渡らずには公園の施設を巡るのは不可能です。ただし、〔水鳥の池〕〔花木園〕〔ハーブ園〕の散策は渡らずに楽しめます。

 それぞれの橋を渡るとそれぞれの新しい風景が広がります。橋が公園の様々な魅力への道標となっているかのようです。立川口から足を踏み入れると、やがて「ふれあい橋」。中央分離帯には植え込みがあり、園内で一番広く、長く大きな橋。渡ると正面には波間に水鳥が戯れ、春秋にはたくさんのボートが浮かぶ〔水鳥の池〕が目の前に迫ります。

 西立川口をくぐって池を左に見て進むと、やがて「さつき橋」。右手前の木立の奥には〔花木園〕。左手前の〔花木園展示棟〕前を折れると〔ハーブ園〕〔バードサンクチュアリー〕に通じます。橋の上から下流に目をやると、「さくら橋」が眺められます。名の通り、桜の見所ポイントの一つです。 橋を渡ってさらに進むと広々とした〔みんなの原っぱ〕。池を右に見て進むと、やがて「もみじ橋」に出合います。名にそぐわない橋もあって残念ですが、この橋の手前の「いろはもみじ」は、季節には真っ赤に紅葉します。橋の上からも若い人たちで賑わう〔バーベキューガーデン〕の雰囲気が伝わってきます。春の花々が美しい〔渓流広場〕を抜けて、小さな木橋を渡ると〔みんなの原っぱ〕の西。渓流の橋や飛び石は名はないものの、それぞれ個性的で風情があります。「もみじ橋」にはさらに奥の〔こどもの森〕へ急ぐ子供たちの姿も目立ちます。

 それぞれが、それぞれの橋を渡ってお目当ての空間に向かいます。昭島口はレインボープールの裏手になるが、入ってすぐ左手に「いちょう橋」。橋も風景もとりわけ美しい。橋の欄干の細工も橋の名にふさわしく、晩秋には公孫樹並木に多くのカメラマンがレンズを向けます。黄金色に染まった柔らかな葉の絨毯を踏みながら歩く人も目立ちます。

 それぞれの橋が、それぞれの風景と結びついています。私は散歩中に途を尋ねられた時には必ず橋の名前を挙げてお答えするようにしています。

 ほかにも幾つもの橋が架けられています。池向こうの「うのはな橋」はひっそりとした橋であるが、対岸の〔川沿いの散歩道〕を見渡すことが出来ます。この散歩道は川の両岸にあるが、陽当たりのよい川の北側は歩きやすく整備され、松の木立も美しく、紫陽花の植栽も進行していて、これからが楽しみです。

 ここまで、橋づくしのように名を挙げてきたもの以外にも、上流の「やまぶき橋」、下流の「さくら橋」も名の通りの風景が広がっています。ほかにサイクリングロードの「あかね橋」「むらさき橋」が南の隅にひっそりとあります。またサイクリングロードを跨ぐように幾つもの陸橋があります。名前はつけられていません。渓流広場や日本庭園にある石橋や木橋にも名前はありません。〔日本庭園〕の池に架かる立派な橋に名のないのは、少々寂しい気もします。

 逆に〔こどもの森〕周辺には「たにのはし」とか「くものはし」と名付けられたもの、また橋とはいえないものの植栽地を跨ぐ太鼓橋のような楽しい橋や、渡り廊下の類がたくさん作られています。周辺の植物を見やりながら渡ることが出来ます。

 和の雰囲気を持った立派な砂川口を入ると広く大きな陸橋「ひびき橋」があり、ひっそりとした佇まいの玉川上水口をくぐると、直ぐにサイクリングロードを跨ぐ、これまた大きな陸橋があり、夏には橋の欄干に絡まったノウゼンカズラが美しく咲きます。渡ると左手には〔こもれびの丘〕の散歩道の入り口、右手の松林の奥からは〔こどもの森〕で遊ぶ子供たちの歓声が、時には風にのって流れてきます。

三島由紀夫の『橋づくし』では願掛けをし、誰とも語らわずに七つの橋を渡ります。偶々、公園の、この川に架かる橋も、自転車専用の〔むらさき橋〕〔あかね橋〕を除けば、七つの橋になります。〔川沿いの散歩道〕を、橋を七つ渡りつくして廻ると、今の私に適当な散歩道のような気がします。願が叶えばよいのですが……。

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